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Vol.15 ハイランドラインに建つグレンゴイン

きのした ともかず/ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーレクチャラー。社内セミナーを機にウイスキーの魅力に目覚める。2022年9月現在、アサヒビール中部統括本部営業企画部で業務用の販促企画などを担当している。

 スコットランドは、ダンディーとグリーノックという東西二つの街を結ぶ想定線を境に、ハイランドとローランドに大別されるというというお話を以前させていただきました。ハイランドラインと呼ばれるこの想定線が引かれた理由は酒税でした。

 1707年にイングランドに併合されて以降、スコットランドのウイスキーへの課税が強化されます。征服国であるイングランドへの反発も相まって密造が横行するようになるのですが、エジンバラなどの大都市から遠く、官吏が足を運べないような場所に蒸溜所を建て、しかも原酒を樽に詰めて隠しているのですから、官吏からすれば摘発もままなりません。

 そこで「税金を安くするからちゃんと収めなさい」ということで引かれたのが、ハイランドラインなのです。1784年にもろみへの課税が決まった際に、北部は低く南部は高いという課税基準を適用するために引かれたのです。

 その後、ハイランドのウイスキー業者にとって存続が危ぶまれるような改正が行われ、再び密造が横行するなど紆余曲折ありましたが、1823年の改正で規制や税率が緩和されて、ようやく密造の時代は終焉を迎えます。

 一方、ローランドではハイランドラインの設定によって、新しいウイスキーの芽が顔を出し始めます。大都市に近く官吏の目が充分に届くローランドのウイスキー業者は、重税に耐えるためにコストダウンと大量生産の道を選ばざるを得なかったのですが、その経験が連続式蒸留機の導入に、ひいてはブレンデッドウイスキーの誕生へとつながっていくのです。

 スコッチの文化に大きな影響を及ぼしたハイランドラインですが、このラインの真上に建っている蒸溜所もございます。それが「グレンゴイン蒸溜所」です。

 蒸溜所の敷地内をハイランドラインが横切っているのですが、仕込み水を蒸溜所の北側からとっているので分類上はハイランドモルトとされるユニークな蒸溜所です。

 そんなハイランドラインの上でつくられるウイスキーの味わいの特徴は、モルトのおいしさと発酵由来のフルーティーな香味です。

 グレンゴインの原酒は、ピートを焚き込まないノンピート麦芽から造られるのですが、そのため、麦芽そのもののおいしさと、発酵や熟成から生まれるリンゴなどのフルーツのような香りが豊かに感じられる、ふくよかな味わいに仕上がっていて、ノンピート・スコッチ・シングルモルトの代表作といえると思います。

 ソフトでマイルドな飲み口も特長の一つで、この穏やかな味わいはローランドに建っている熟成庫で時を重ねるからなのかも知れません。 当社ではそれらの特徴を持つ「グレンゴイン10年」と、シェリー樽で21年 以上じっくりと熟成させ、成熟した香りと樽の味わいをもたせた「グレンゴイン21年」を取り扱っております。ぜひお試しください。

 ピートを焚き込まないノンピートモルトでつくる、ハイランドラインに建つ蒸溜所のシングルモルト。

右が「グレンゴイン10年」(容量700㎖/アルコール分40%/税別参考小売価格9300円)。左が豊かな果実香と長いアフターテイストが特徴の「グレンゴイン21年」(700㎖/43%/2万1990円)。

※「醸-かもす-」2016年9月号掲載

※本記事の内容は日付等の記載がない限り「醸-かもす-」掲載時点でのものであり、将来にわたってその真意性を保証するものでないこと、掲載後の時間経過等にともない内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。

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