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思いを言葉に紡ぎ出すお酒の力

~未来へつなぐ最高の一杯~第4回

アサヒビール京滋支店 木村俊支店長

 「長男がちょうど二十歳になった時に、外へビールを飲みに行ったのがやっぱり嬉しかったですよ」と話す木村支店長。早くに父を亡くし、自身にはそういった経験はなかった。どういった形になるのだろうと気をもんでいたが、意外とすんなり事は進んだという。

 「おめでとう!って言う感じで飲めるかと思っていたら、そうじゃなくって(笑)。すんなり、普通に飲んだって言う感じで。それよりも息子が案外強かったのにびっくりしましたね(笑)」。何か特別な事が起こったわけではなかった。ただ育み慈しみ見守ってきた長男が一つの区切りを迎えた時に、自身の仕事としているお酒とともに立ち会えた。父親としての嬉しさは、かけがえのないものだったと話す。

 その長男は目下、就職活動の真っただ中。社会人への扉を開く、大きな区切りの時に向かっている。長男と二人で飲みに行く機会も多いという木村氏。「一対一で話す悩み事の中身なんかも、普段とはちょっとずつ違ってきますよね。『お父さんの会社はどうなん?』とか、詳しい事をきいてくるようになったり。普段は言えなかったり聞けなかったりするような事も、お互いお酒を飲む事で素直に話せる。ありがたいですよね」と話す。

 また一つ成長しようとしている息子の気持ちや悩み、疑問。様々な思いを言葉として紡ぎだす。それもお酒の力だ。

アサヒビール京滋支店 木村俊支店長

 長男にとっては親でもあり、そして社会の大先輩でもある木村氏だが、仕事で得た喜びを家庭で話す事はほとんどないという。「家に帰った時は大体酔っ払ってますからね(笑)」とその理由を言って笑うが、これからは少し変わるかもしれない。

 長男が社会人として成長して行けば、親と子の会話にも、少しずつ社会人同士の会話が加わってくる。そんな息子の成長を感じながら、社会人としての喜びを語り合う時は近い。

 そしてその頃にはもう一人、「まだ興味も持っていないようですし、うらやましいとは思ってないような気はしますね(笑)。ただ、楽しく家族で飲んでいる姿を見て、お酒は楽しい時に飲むもんやと思ってくれれば」という次男が、二十歳を迎え会話に加わっているのかもしれない。

 家での晩酌は夫人も一緒。「嫁さんも僕と同じ喜びやと思いますよ。僕の居ない時は二人で飲んでんのちゃうかな。買って置いたはずのビールがなくなったりしてますんで(笑)」と笑う木村氏の表情からは、幸せな家庭の風景が垣間見える。何気ない毎日をハレの日に変える。そんな力もお酒は持っている。

※全国醸界新聞2013年5月27日号掲載

※本記事の内容は日付等の記載がない限り「醸-かもす-」掲載時点でのものであり、将来にわたってその真意性を保証するものでないこと、掲載後の時間経過等にともない内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。

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