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Vol.12 スコッチと少し異なるアイリッシュ②

きのした ともかず/ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーレクチャラー。社内セミナーを機にウイスキーの魅力に目覚める。2022年9月現在、アサヒビール中部統括本部営業企画部で業務用の販促企画などを担当している。

 前号ではスコッチと少し異なる味わいを持つウイスキーとして、アイリッシュウイスキー「ブッシュミルズ」をご紹介させていただきましたが、味わい以外にもスコッチとアイリッシュでは異なる点がございます。

 弊社が国内販売しております「ブッシュミルズ」は4アイテムございますが、ブレンデッドの「ブッシュミルズ」と「同 ブラックブッシュ」も、シングルモルトの「同 シングルモルト10年」と「同 シングルモルト16年」も、蒸溜所の名前である「ブッシュミルズ」が商品名になっています。これもスコッチとは違う点です。

 スコッチにはシングルモルトにのみ蒸溜所の名前を付けられるという決まりがあるのですが、アイリッシュにはそういった決まりがございません。ですので、ブレンデッドもシングルモルトも、「ブッシュミルズ」と名乗れるのです。

 表記方法という点では、ほかにも違う点がございます。その違いとは「Whisky」と「Whiskey」です。

 この違いの原因は、19世紀中ごろまでさかのぼります。

 スコットランドのローランドでグレーンウイスキーが誕生しブレンデッドウイスキーが世に出始めると、アイルランドとスコットランドのハイランドの業者が、「グレーンやブレンデッドは、ウイスキーという名称を使うべきではない」という訴えを起こしました。

 1909年にはグレーンもブレンデッドもウイスキーであるという判決が出るのですが、その騒動の中で、アイルランドの業者たちは「自分たちの伝統ある本物のウイスキーは、鍵をかけて守るべき価値のあるものだ」という理由で、綴りの最後を「key(鍵)」に変えたのです。

 それ以降2種類の表記が世界に混在することになります。

 竹鶴政孝翁がスコッチの技術を伝えた日本や、英連邦の一員であるカナダなどでは「Whisky」との表記が多いのですが、アメリカでは、ウイスキー製造を始めた移民の創業者がスコットランド系なら「Whisky」、アイルランド系なら「Whiskey」になったと言われています。

 過去の経緯が今もラベル表記に残っている。そんな人間臭さもウイスキーの面白さの一つです。

 余談ではありますが、今回から連載のタイトルの表記を「Whisky!Whisky!!」から「Whisky!Whiskey!!」へと、鍵をかけさせていただきました。皆様がウイスキーを楽しまれるための一助として、この連載を心に留めおいていただければとの思いからです。

 今後とも御目通しくださいますよう、よろしくお願いいたします。

※画像をクリックするとAmazonのページに遷移します。

 現在稼働している最古の蒸溜所「ジ・オールド・ブッシュミルズ・ディスティラリー社」の「ブッシュミルズ」。写真左から、ノンピートモルト原酒とグレーン原酒をブレンドした「ブッシュミルズ」と「同ブラックブッシュ」、モルト原酒を100%使用した「同シングルモルト10年」と「同シングルモルト16年」。全品アルコール分40%。瓶700㎖。オープン価格。

※「醸-かもす-」2016年6月号掲載

※本記事の内容は日付等の記載がない限り「醸-かもす-」掲載時点でのものであり、将来にわたってその真意性を保証するものでないこと、掲載後の時間経過等にともない内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。

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