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Vol.13 スコッチの原動力 6つのモルト生産地域

きのした ともかず/ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーレクチャラー。社内セミナーを機にウイスキーの魅力に目覚める。2022年9月現在、アサヒビール中部統括本部営業企画部で業務用の販促企画などを担当している。

 今回からは、世界5大ウイスキーの筆頭格といえる、スコッチのお話にお付き合いください。

 皆様ご存知の通り、スコッチとは英国・スコットランドで製造されるウイスキーの総称ですが、法律によって糖化や発酵、蒸溜をスコットランド内の蒸溜所で行うことや、保税倉庫での3年以上の熟成に加え、2012年からは瓶詰め、ラベリングもスコットランド内で行うことなど、厳格に定義されています。そうして製造されたスコッチは世界各国に輸出され、2014年のスコッチの輸出額はおよそ39憶5千万ポンド。同年の平均為替レートで換算すると、日本円では6800億円を超える規模となっています。

 スコットランドは大別して、東側のダンディー、西のグリーノックという二つの町を結ぶ想定線を境に、北側のハイランドと南側のローランドという地域に分けられます。スコットランドでは、昨年8月の時点で106の蒸溜所が稼働していますが、ハイランドに大半の蒸溜所が存在しています。

 ハイランドも東西南北で大きく分けられるのですが、ハイランドの東側に流れるスペイ川周辺は、スコットランドの全蒸溜所の半分近い48の蒸溜所が現在稼働中で、ウイスキーの製造が特に盛んな地域です。そこでつくられるモルトウイスキーは「スペイサイドモルト」と呼ばれています。

 スコットランドの西側、キンタイア半島の街、キャンベルタウンでつくられるモルトウイスキーも「キャンベルタウンモルト」と呼ばれています。かつては大西洋側の海運の拠点として栄え、ウイスキー産業も盛んだったのですが、米国での禁酒法などの影響で衰退し、残念ながら現存する蒸溜所は3つとなっています。

 また、スコットランドの北側に位置するオークニー諸島や西側のスカイ島、マル島、ジュラ島などでもモルトウイスキーが造られていて、それらは「アイランズモルト」という総称で呼ばれています。

 ただ、ジュラ島のすぐそば、アイラ島でつくられるモルトウイスキーは、その個性的な味わいや、大きいとは言えない島に現在も8つの蒸溜所が稼働していることなどから、「アイラモルト」と呼ばれて、アイランズとは別に分類されています。

 「ハイランド」「ローランド」「スペイサイド」「キャンベルタウン」「アイラ」「アイランズ」と、近年の定義では6つに分類されているスコットランドのモルトウイスキー生産地域ですが、それぞれに特徴があり、また、地域は同じでも分類に当てはまり切らない味わいのものもあり、様々な味わいのモルトウイスキーが造られているのですが、その多様性こそが世界を席巻するスコッチの原動力といえるのではないかと思います。

 そのウイスキーの本場スコットランドには、「ベン・ネヴィス」というニッカウヰスキーが所有する蒸溜所がございます。手前味噌ではありますが、ベン・ネヴィスのウイスキーは、ハイランドの伝統的な味わいを現代に伝えるウイスキーではないか。個人的にはそう思っています。次回はそのベン・ネヴィス蒸溜所について、お話させていただきたく思います。

ニッカが所有するスコットランドの蒸溜所のシングルモルト「ベンネヴィス10年」。(700㎖・アルコール度数43%・税別参考小売価格4990円)

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