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黒ラベル奮闘記 第四回 ~大屋均④~

お客様に助けられた営業マン

サッポロビール執行役員 大屋均近畿圏本部長

 新聞でドライ戦争が報じられていた昭和63年、京都支店から横浜支社へ転勤した私は、「本当にビールがドライみたいになっていくのか」と疑問を感じていた。びん生(後の黒ラベル)も好調で、京都でも“生はサッポロ”という評価が定着し始めていたし、首都圏は特にそうだったからだ。

 ところがその翌年、びん生をリニューアルし、新たに「ドラフト」として発売することが決定した。

 「なんでだ!?どうしてだ!?」。当時の営業は誰もがそう思っていたと思うが、社内は「ドラフトに命を懸けろ!」の大号令。びん生の話は一切ご法度になった。

 ドラフトの発売後、ひたすらお願いしてまわったが、特約店に行くと、肌で実感できるほど数字が急激に落ちていく。どこに行っても厳しい言葉を投げつけられる。特約店に行くことも、お客様の声を聴くことも本当に辛かった。

 ―そのお客様の声がびん生を復活させた。

 「なんで黒ラベルをやめたんだ」。「黒ラベルをやめてしまうサッポロなんてもう飲まない」。本社へは苦情の手紙が山のように送られていた。

 半年後、びん生の愛称だった黒ラベルを正式ブランドとして復活した。黒ラベルというビールのすごさを再認識するとともに、「ご法度でも黙ってちゃいけない。現場の声、お客様の声を会社に言い続けないといけない」と営業マンみんなの意識が変わった。

 もう1年「ドラフトに命を懸けろ」と言われていたら、営業全員がダメになっていたと思う。黒ラベルを愛して下さる多くのお客様の声が、営業マンを助け、成長させてくれた。(次号に続く)

※全国醸界新聞2012年5月14日号掲載

※本記事の内容は日付等の記載がない限り「醸-かもす-」掲載時点でのものであり、将来にわたってその真意性を保証するものでないこと、掲載後の時間経過等にともない内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。

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