PICK UP!

黒ラベル奮闘記 第七回 ~横山雅一氏②~

答えはお客様が持っている

サッポロビール 横山雅一京都中央支社長

 「黒ラベルは絶対復活しないといけない」。その思いはどんどん強くなるものの、社内で黒ラベルの事を口に出すのは御法度。復活の要望を伝えるには業務日誌に書くほかなく、お客様の声と自分の思いを重ね合わせながら「今日も復活しろとお叱りを受けた」と書き続ける日々が続いた。

 そしてその年の9月、とうとう黒ラベルが復活した。「自分の惚れた商品が戻ってきた!」と喜んだのも束の間、ある事に気付いた。「今までに失ったお客様を取り戻せるのか?」。その危惧は危惧に終わらなかった。

 黒ラベルをお取扱い頂いていた飲食店を一軒一軒回り復活をご案内したが、喜んでくださる方もおられる一方で、「出したり引っこめたり何なんだ」「サッポロは信用できない」と叱責の声も容赦なく飛び交った。入社後初めて手にしていた取扱店リストのうち、3割には他社への切り替えを表すバツ印が並び、その後も丸印へと変わる事はなかった。当社を応援して下さっていた問屋さん(前号参照)も、復活までの約半年間で大きく売り上げを落とされていた。

 黒ラベルを無くした影響が、自分達のみならず、黒ラベルを応援して下さっていたすべての方にまで及んでいた。あの時の申し訳なさと悔しさは今も忘れられない。

 当時は「黒ラベルはもうだめだ。時代はもう新しんだ」と、ドラフトへのリニューアルを決断したのかもしれない。しかしそこにお客様の意見はあったのかと疑問が残る。「答えはお客様が持っている」。お客様の意見を集約し物事を決めていく大切さ。当時学んだこの事は、今も私の指針の一つだ。

※全国醸界新聞2012年7月12日号掲載

※本記事の内容は日付等の記載がない限り「醸-かもす-」掲載時点でのものであり、将来にわたってその真意性を保証するものでないこと、掲載後の時間経過等にともない内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。

関連記事

  1. 「縁」つなぐ不思議な山荘 …

  2. 黒ラベル奮闘記 第十回 ~横山雅一氏⑤~

  3. Vol.12 スコッチと少し異なるアイリッシュ②

  4. Vol.2 ケルト民族のたくましさとウイスキー

  5. 黒ラベル奮闘記 第十一回 ~白石英樹氏①~

  6. 日々受け継がれるもてなしと感動

  7. Vol.8 余市と対をなす宮城峡の個性

  8. 「飲みやすい」は誉め言葉 共生の豊かさ込めた酒

  9. Vol.14 古典的な味わい伝える西ハイランド

Futures articles

  1. 古の知恵足場に一歩ずつ
  2. 滋賀の地酒は玉手箱 キラキラ輝く豊かな個性
  3. 様々に楽しめるコニャック
  4. Try me,Drink me,Love me
  5. 「お酒」とはなにか 〜アルコール飲料が醸すもの〜

人気記事

PAGE TOP
error: Content is protected !!