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黒ラベル奮闘記 第十回 ~横山雅一氏⑤~

「一番合わない」と言われた京都

サッポロビール 横山雅一京都中央支社長

 自分が選んだ業務用の道に間違いはないと、気持ちを新たにした東京で9年を過ごした後、配属されたのは兵庫県。担当は加古川や姫路などの播州エリアだった。

 生き馬の目を抜くような市場から一転、営業先で返ってくる答えは「札幌からわざわざ来たんですか?」「黒ビールはいらない」。当時、播州のシェアは4%あるかないか。黒ラベルの認知度の低さに愕然とした山陰よりもさらに低かった。

 ―黒ラベルに自信を持ってやってみろ―。枝元社長の言葉を思い出し気合を入れた。やる事は山陰時代と同じ。トラックに積まれた赤い箱の行先を追った。大事なのは現場に携わる様々な方とのつながり。それは播州でも変わらなかった。

 播州を1年、三宮を3年半担当し、現在の京都へ配属された。初めて所属長として配属が決まった際、諸先輩からは「横山みたいなのは一番京都に合わない。言葉遣いや礼儀作法にとにかく気をつけろ」と注意された。

 確かに配属された当初、厳しいお言葉を頂戴した事もあるが、それは言葉使いや礼儀作法といった形の事ではなかった。

 人間としての素直さや謙虚さ、一つひとつをおろそかに扱わない姿勢。人間関係を大事にする京都では、それらに欠ける人間は信用してもらえない。社内的な立場は所属長であっても、社外的には一社員。一人の人間として、いかにお客様と真摯に向き合っていくかが大事だと、改めて教えて頂いたと感じている。

 人間の本質と本物の商品を大事にする京都。諸先輩から「合わない」と言われた街が、今では長くいたいと思える街になっている。

※全国醸界新聞2012年8月27日号

※本記事の内容は日付等の記載がない限り「醸-かもす-」掲載時点でのものであり、将来にわたってその真意性を保証するものでないこと、掲載後の時間経過等にともない内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。

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