きのした ともかず/ウイスキー文化研究所認定 ウイスキーレクチャラー。社内セミナーを機にウイスキーの魅力に目覚める。2022年9月現在、アサヒビール中部統括本部営業企画部で業務用の販促企画などを担当している。
様々な個性を持つスコットランド・ハイランドのモルトウイスキーですが、ハイランドモルトのメッカとも言えるのが「スペイサイド」と呼ばれる地域です。
ハイランド東部を南から北へと流れるスペイ川と、その東西を流れるロッシー川、デブロン川、フィンドーン川の流域、四方50㎞余りの地域に、2016年2月の段階で48の蒸溜所が稼働しています。
スコットランド全体で稼働している蒸溜所の数が108ですので、その半数近くがスペイサイドに密集していることになります。製造量も全体の6割を超えており、ハイランドモルトのメッカ、ひいてはスコッチのメッカと言っても差し支えはないでしょう。スコットランドに渡ったニッカウヰスキー創業者、竹鶴政孝翁を最初に迎え入れた蒸溜所、ロングモーン蒸溜所もスペイサイドにあります。そのことからすれば、ジャパニーズウイスキーの源流とも言えるのかもしれません。
蒸溜所が密集している理由は、その自然環境にあります。ウイスキー造りに適した豊富な水、麦芽の栽培に適した平野、そして豊富なピートといった原料面での恩恵に加えて、河川流域の渓谷は熟成に適した気候を生むとともに、密造の時代には税官吏の目を欺くのにもうってつけで、ウイスキーの文化や技術の伝承にも役立つなど、不遇の時代も含めて、ウイスキーにとって最適な要素がそろった土地なのです。
その自然環境を利用してつくられるモルトの特徴は、華やかでかぐわしい香りと軽やかな味わいです。香味のバランスの良さにも優れた銘酒が揃うスペイサイドのモルトは、ブレンデッドウイスキーのキーモルトにも大変多く使用されています。ブレンデッドの華やかさや飲みやすさといった特徴は、スペイサイドモルト抜きでは成しえないと言っても過言ではないでしょう。
華やかさや軽やかさといった、スペイサイドモルトの特徴を最大限に引き出したウイスキーが、今回ご紹介させていただく「グレングラント ザ メジャーリザーブ」と「グレングラント10年」です。
近年では、世界的なウイスキー評論家であるジム・マレー氏が発行している「ウイスキーバイブル」の2016年版で、「グレングラント10年」がスコッチシングルモルトウイスキー・マルティプルカスク部門・の最高賞「シングル モルト オブ ザ イヤー」を受賞し、また、「ベスト シングルモルト スコッチ」(10年以下の部)も4年連続で受賞するなど国際的な評価も非常に高い、スペイサイドを代表するシングルモルトです。
ぜひ一度お試しいただいて、スコッチのメッカ、スペイサイドのモルトの特徴を感じていただければと思います。
次回は「グレングラント」が持つ華やかさや軽やかさが、どうやって引き出されているのかについて、お話しさせていただきます。
右は「グレングラント メジャーリザーブ」(700㎖・アルコール度数40%・オープン価格)。軽やかな華やかさを持つ香りで、ラインアップ中最もライトでキレのよい味わい。
左は「グレングラント10年」(700㎖・40%・オープン価格)。甘くやわらかで、よりフルーティーさが際立つ味わい。
※本記事の内容は日付等の記載がない限り「醸-かもす-」掲載時点でのものであり、将来にわたってその真意性を保証するものでないこと、掲載後の時間経過等にともない内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
「醸-かもす-」2016年10月号掲載。