~未来へ受け継ぐ最高の一杯~第7回
アサヒビール大山崎山荘美術館 川瀬高明事務長
「音楽は聴いてもらって感動を伝える。美術は見てもらって感動を伝える。音楽と美術の違いはありますけど、感動を伝えるという意味では一緒なのかなと思いますね」と話す、大山崎山荘美術館の川瀬事務長。自らの現在と過去の共通点の一つとして “感動”を挙げる。その一対をなすのは、大学時代に取り組んだ男声コーラスで得た感動だ。
優しく優雅なイメージのコーラス部だが、美しいハーモニーを響かせるためには体力強化が必要不可欠。発声に必要な腹筋を鍛えるために、足上げ腹筋を繰り返す。たまらず足が震えだすと、先輩の怒号が飛んだ。厳しい練習が続く毎日ではあったが、美しく、また、重厚なハーモニーを響かせ感動を呼び起こすコーラスに魅せられ、練習に打ち込んだという。
そんな川瀬氏が大学時代に在籍していた男声合唱部「同志社リーダークランツ」が今年で創立80周年を迎え、記念音楽会を開くという一報が届いたのは昨年の夏。OBとして参加を促され、現在は演奏会に向け、仕事の合間を縫って練習会に参加しているという。
川瀬氏のパートは男声4部のパートのうち、和音の内声部を主に担当する、セカンドテノールと呼ばれるパート。和音の響き方を決める重要なパートだけに、当然練習にも熱が入るが、本格的に歌うのは大学卒業以来約30年ぶり。「なかなか昔のようには出来ないですよね(笑)」と笑う。
しかし「出来なくてもなるべく近づける。後は音取り。やった事のある曲もありますが初めての曲もありますんで、しっかりと譜面を読み込まないと」と、意欲は衰えない。その意欲を支えるのは、かつて味わったコーラスの魅力と感動。そして練習後の飲み会だ。
上は80代から下は20歳過ぎの現役学生まで、一緒になってお酒を飲みそして語らう。「反省しながらバカいいながらって感じですけど(笑)。演奏会という大きな目標に向かって、どれだけ良い演奏会にしていくのかと、割りあいみんなで真面目に話してますね」という練習後の飲み会。お酒のもたらす高揚感と一体感が、近い将来、皆でわかちあうであろう感動を、より確かなものへと変えていく。意欲はますます増していく。
川瀬氏にとって約30年ぶりとなる演奏会は、9月29日、滋賀県大津市のびわ湖ホールで開催される。
「身体全体を使って歌った後なんで、身に沁み込むようですよ(笑)」と、練習後の一杯のビールの旨さを語る川瀬氏。演奏会後に飲む一杯は、その旨さはもちろん、皆と感動をわかちあう最高の一杯になるはずだ。
※全国醸界新聞2013年8月27日号掲載
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