~未来へつなぐ最高の一杯~第三回
アサヒビール京都支店 垣内康志支店長
昨年9月に業務用専門の部隊として生まれ変わった京都支店。メンバーは経験豊富なベテランばかりだが、その手綱を握るのが垣内支店長。「個性的な人間ばっかりで、私の言う事なんて誰も聞かないんですよ(笑)」と笑うが、メンバーへの信頼感は強い。「一見バラバラに見えるんですけど、プロ意識を持った人間ばかりなのでベクトルはあってる。徐々に成果が出始めてるんで、この調子で頑張っていきたいですね」と、現在の手ごたえを語る。
平成3年の入社以来、業務用の営業一筋。夕方になれば、“行ってきます”と言って会社を出て飲食店に足を向ける。そんな習慣が身に付いている垣内氏だが、入社当時は飲む機会の多さに戸惑ったという。入社当時、ビール会社だけにお酒を飲む機会は多いだろうと思ってはいたが、その回数は自身の想像を超えていた。先輩たちの飲むビールの量にも驚きを隠せなかった。お酒が強い方ではないという垣内氏にとっては「なぜこんなに飲むんだ」と疑問だったという。
その疑問を払拭する一杯があった。初めての慰安旅行に行った時のことだ。行きの電車の中、昼食時、そして夜の宴会と延々とビールを飲み続ける先輩たち。垣内氏も勧められるまま飲み続け、ようやく布団にもぐりこんだ時には、どれだけ飲んだかも定かでないほどだったという。そして翌朝、二日酔いの重い頭を抱えながら朝食会場へと行くと、先輩たちはまたビールを頼み、平然とグラスに注いでいた。
「当時の先輩方は年輩の方が多くて、苦しい時代を経験してこられた方達でもありますし、工場出身の方が多かったんですよ。だから本当にビールが大好きで、自分たちの製品や会社に対する愛情も特に強かったんでしょうね。愛社精神っていうんでしょうか。自分たちの製品を心の底から愛しているんだなって実感しましたね」と当時を振り返る。「でも二日酔いだったから旨くは思えなかったんですよ(笑)」と話す一杯は、長年アサヒビールを支えてきた先輩たちが、自社製品を愛する気持ちを教えてくれた一杯だった。
あれから20年以上の月日がたち、その間、業務用の営業マンとしての達成感を味わう最高の一杯を重ねてきた。その活躍の原点の一つに、飲む理由を教えてくれた慰安旅行での一杯がある。最高の一杯を重ねる度にあの朝注がれたビールが、アサヒビールの精神を受け継ぎ伝えた、かけがえのない最高の一杯へと変わっていく。
※全国醸界新聞2013年4月27日号掲載
※本記事の内容は日付等の記載がない限り「醸-かもす-」掲載時点でのものであり、将来にわたってその真意性を保証するものでないこと、掲載後の時間経過等にともない内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。