答えはお客様が持っている
「黒ラベルは絶対復活しないといけない」。その思いはどんどん強くなるものの、社内で黒ラベルの事を口に出すのは御法度。復活の要望を伝えるには業務日誌に書くほかなく、お客様の声と自分の思いを重ね合わせながら「今日も復活しろとお叱りを受けた」と書き続ける日々が続いた。
そしてその年の9月、とうとう黒ラベルが復活した。「自分の惚れた商品が戻ってきた!」と喜んだのも束の間、ある事に気付いた。「今までに失ったお客様を取り戻せるのか?」。その危惧は危惧に終わらなかった。
黒ラベルをお取扱い頂いていた飲食店を一軒一軒回り復活をご案内したが、喜んでくださる方もおられる一方で、「出したり引っこめたり何なんだ」「サッポロは信用できない」と叱責の声も容赦なく飛び交った。入社後初めて手にしていた取扱店リストのうち、3割には他社への切り替えを表すバツ印が並び、その後も丸印へと変わる事はなかった。当社を応援して下さっていた問屋さん(前号参照)も、復活までの約半年間で大きく売り上げを落とされていた。
黒ラベルを無くした影響が、自分達のみならず、黒ラベルを応援して下さっていたすべての方にまで及んでいた。あの時の申し訳なさと悔しさは今も忘れられない。
当時は「黒ラベルはもうだめだ。時代はもう新しんだ」と、ドラフトへのリニューアルを決断したのかもしれない。しかしそこにお客様の意見はあったのかと疑問が残る。「答えはお客様が持っている」。お客様の意見を集約し物事を決めていく大切さ。当時学んだこの事は、今も私の指針の一つだ。
※全国醸界新聞2012年7月12日号掲載
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