サッポロビール文化広報顧問・ヱビスビール記念館館長 端田晶氏に聞く②
「醸-かもす-」2015年2月号掲載
業界にいますとね、どうしてもマクロにものを見てしまうので、前年比97%ですなんて言われると、「3%も落ちた!大変じゃないか!」って思ってしまうんですけど、自分の生活の場で3%落ちるもの、たとえば納豆の消費が3%減りましたとか言ってもね、個人で言えばそんなの減ったかどうか分からないんですよ(笑)。
毎日食べてるものがその年は風邪をひいて何日か食べなかったらそれぐらい変わるわけです。だから需要は何かの拍子でちゃんと戻ってくると思います。
ただ、その何かの拍子っていうのは、僕らがきっちり提示していかないといけない。
例えば、「この季節は夏牡蠣がおいしくて、この白ワインを合わせて、レモンをちょっと搾って」とか、お酒の楽しさみたいなことやそのシチュエーションをお話して、相手の口の中に唾を溜めさせれば、お酒の需要は増えるわけですよ。そこに僕らが持っていけるかどうかだと思います。
ヱビスビール記念館でもそうなんですが、今日一杯減らして、明日も健全に飲んでもらうほうがいいですよと、そういうことは平気で言っています。健全に飲む、楽しく気持ちよく飲む。その積み重ねだと思うんです。それがあって、はじめて次の代に伝えていくっていうことを真剣に考えてもらえると思います。
人を誘うって面倒くさいことで、ましてや自分の周りにいる若い人たちがお酒は苦手でとなっちゃうと、さらに面倒くさくなるわけですよね。それを、昼ご飯を一緒に食べに行って「次は飲みに誘うからね」と、少しずつ自分のモチベーションを上げていかないとダメだろうなと。
本人が楽しくて、その楽しさを知りあいと分かちあいたい、知らない人とも分かちあいたい、自分の周りの人間に教えたいと、そこまでモチベーションが上がっていくのが理想です。
「びあけん(日本ビール検定)」はそういう目的があって、ビールを語りたくなるような問題でありたいし、ビールを語れる人が増えるのが理想。だから1級の問題には論述の問題を入れてあります。
要は‟語る”ということです。去年の問題は、「あなたの職場にビールが苦手だという若い人が来ました。その人は梅酒なら飲めるといっています。ではその人をどうやってビールに誘いますか」という問題でした。
梅酒が飲めてビールが嫌いということは苦味が苦手なんだ。梅酒が大丈夫なんだから少なくとも酸味は大丈夫だろうし、果実の香りは好きだろう。するとちょっとオレンジピールの香りがして苦みの少ないベルジャンホワイトみたいなタイプのビールを探して、それにどういう料理を合わせようとか、そういった回答が求められるわけです。
そういう‟語る”ことに知識や知恵を回してもらいたいんです。
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