~未来へつなぐ最高の一杯~第9回
スーパードライ京都店 仙田直美店長
「京都アサヒ軒」「京都ニューアサヒ」「ローゼンタール京都」と、時代とともに名を変えながら、うまいビールを提供し続けてきたビアレストラン「スーパードライ京都」。現在店長を務める仙田さんと同店は、高校一年生の時にアルバイトとして働き始めた時からの付き合い。ゆえにお酒の思い出も仕事に関わるものが多い。
アルバイト時代はもちろん、高校卒業後正社員となってからも、二十歳になるまでお酒は厳禁。「頼りにされたいのに、頑張りたいのに、私はかやの外?みたいに感じてました(笑)」と当時の気持ちを話す。アルバイトとして頑張ってきた自負や、社員として新たに頑張る気持も強かったがゆえに、先輩たちがお酒を酌みかわす場面では、疎外感や歯がゆさも感じていたという。
それだけに二十歳になった時、打ち上げで飲んだビールは格別だったという。「初めて飲んだビールは冷たくて喉越しがよく、言葉にできないくらいおいしかった」。仲間として認められたという嬉しさとともにのどを滑り落ちていくビール。そのおいしさに感動をおぼえたという。
その感動を胸に数々の経験を積み、飲食業のプロとしての道を歩んできた仙田さん。同店は「人と人のつながりがすごく活きているお店」だという。前身となるビヤホールが開店したのは昭和初期のこと。それ以来、長きにわたり京都の街で歴史を刻んできた同店。「世代を超えて通ってくださっているお客様が多くて、従業員を子供や孫のように可愛がり、温かく育ててくださっている。私自身もそうして育てて頂きましたし、もちろん今も変わりません」と話す。お客様をもてなそうとする心が信頼を生み、その信頼に応えようと、さらに心を込めてもてなす。
ビールの持つ高揚感やおおらかさとも相まって、家族の様な親近感をも生み出し、そして従業員をも育てる。そういった事が長きにわたり繰り返されてきたのだろう。
「お客様に褒めて頂くのは嬉しいですが、その行動が全ての答えじゃない。別の行動を期待するお客様もおられる。自己満足の接客になってはいけない。お客様一人一人にあわせてその場その場で判断して行動するのが大切」と語る仙田さんの言葉からは、お客様に育てられてきたおもてなしの心が、今も息づいていることが伺える。
お客様から寄せられる信頼感や親近感が、同店に連綿と受け継がれてきた“もてなしの心”を仙田さんの心にも育んだ。そしてその心が、今日も新たな感動を生み出している。
※全国醸界新聞2013年10月27日号掲載
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